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#02鈴木 央×中村佑介

『七つの大罪』の衝撃~鳥山明と鈴木央の共通点

中村はじめて『七つの大罪』を読んだ時、ビックリしましたよ。僕は『ドラゴンボール』が大好きで、子供の頃それで衝撃を受けてから、今までいろいろ少年漫画を読んできました。でも、どこかで「やっぱりなんか違う…」とずっと思ってたんです。でも『七つの大罪』を読んだ途端、「これだ!」って。まず女の子の肢体までもが異常に可愛いし、女の子に限らず、キャラクターが“絵=記号”を超えていくような感覚がありました。だからなのか、子供の頃に『ドラゴンボール』で感じた言い知れないドキドキ感と、本当に同じような感覚になれたんです。

鈴木そんなに褒められた事ない(笑)。ありがとうございます。子供の時に漫画を読む感覚と、大人になってから読む感覚って、だいぶ違いますよね。子供の時は長く感じていた物語も、大人になって見ると実はすごく短かったりする。感じる時間、テンポが違うんだろうなと。それによって、感じる内容の密度も違ってくる。例えば『ドラゴンボール』は、「今週はどんな話?」と聞かれたら、子供でもすぐに説明できましたよね。僕は、そういう漫画にしたいと思って描いているんです。大人の感覚に頼りきって描くんじゃなくて、子供が読んだ時にも、ちゃんと内容を読み取って面白がってもらえるような。

中村それは毎回、分かりやすいヤマをつくるという事ですか?

鈴木それもあるし、毎回ちゃんとストーリーが進んでいるようにしたいという事です。大人向けの漫画だと、何週にも渡って物語自体はあまり進んでいない…というのもあるじゃないですか。もちろんそれはそれで、大人のテンポだったら面白く読めるからいいと思う。でも『七つの大罪』はそうではなくて、子供のテンポにも合わせたいんです。

中村なるほど。すごく分かります。僕も考える事があって…。イラストって、漫画ほどメジャーなものではないし、文脈を読みとりづらい分野ではあるけれど、“イラスト好き”の人たちの目は確実に肥えていってる。例えば、僕の絵を見た時「これは林静一さんとかの流れ」って分かるだろうし。で、僕自身、どこかでそういう事を前提として描いていたところがあったんです。というか、イラスト業界自体が、今までそうしてきちゃったのかもしれない。だからこそ、あくまでも“イラスト好き”という狭い層にしか向けられていなくて、それこそ漫画のようにメジャーなものになっていないんだなと。もっと広げたいと思ったら、それではダメなわけですよね。今の話を聞いていて、その事と繋がるなと思いました。

鈴木前提がある大人、目が肥えている人たちは、いきなりレベル10の事をやってもついてきてくれる。でも、ちゃんと1を見せずにそればかりでやっていくと、どんどん狭くなっていく気がします。

中村うんうん。僕たち大人は面白いと思っていても、子供が読んだら「よくわかんない」ってなりそうな漫画、今たくさんありますよね。

鈴木具体的な事で言うと、例えばコマ割とか。コマに対する絵の入れ方がソリッドすぎるというか…。上手だし、かっこいいんですよ。でも、そのコマだけ見たら、いまいち何が起こっているか分からなかったりする。僕は、自分の漫画ではそういうコマをつくりたくないんです。極力、どのコマも分かりやすくしたいと思って描いてますね。

中村たしかに、『七つの大罪』のコマ割はすごく読みやすいです。

鈴木あと、僕があの漫画で意識的にやっているのは、どのページでも、コマの外に“柱”を入れられるようにという事です。漫画誌に掲載される場合、担当さんが登場人物説明の柱などを入れてくれるんですが、わりとそれは大事だなと思っていて…。話を分かりやすくするのはもちろん、そういう柱で「このキャラはこういう人なんだ」と確認できれば、たまたまその時はじめて読んだ人も入りやすいじゃないですか。だから、ほとんど断ち切りのコマはつくりません。それに僕の場合は、コマを断ち切りにする事にさほど意味を感じないので。

中村鳥山明さんもそうですもんね。ちゃんとワク内にコマがすべて収まっている。というか、最近は断ち切りコマが多くなっているけど、昔の漫画はそうじゃなかったのかな。それこそ、全部同じ形のコマで番号が振ってあるような。

鈴木そうそう。しかも、『サザエさん』とかを見てもそうですけど、すべて“引き”の絵なんですよ。確実に何をやっているのかが分かる。アップじゃないんです。僕も、なるべく見開きで引きの絵を入れたり、アップは少なめにしたり、という事は気をつけてます。分かりやすくするために。

中村すごいなぁ~。なぜ僕がこれほど鈴木さんの漫画を好きなのか、謎が解けました! 作品を読んでいて、話の面白さやキャラの魅力はもちろんだけど、それを超えて伝わってくるものというのは確実にあって…。それって、作者の人の気持ちや考え方なんですよね、簡単に言えば。僕の場合は、無意識のうちにそこに惹かれて作品を読み続けて、もっと言えばこの作者さんに「会ってみたい」「友達になりたい」と思うんです。鈴木さんはまさにそうで、実際こうやってお話を聞いて、めちゃくちゃ納得しましたもん。…好きです! 友達になってください!!

──告白ですか(笑)。

鈴木央さんの仕事机には『ドラゴンボール』のランチのフィギュアが、そして玄関には鳥山明さんのサインが飾ってありました。

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